鍼灸

見立て(東洋医学的な診断)

私達は第一にご縁があり訪れてくれた方の心と身体の声を聴く事が大切だと考えています。人は肉体だけで生きているのではなく、心と身体がバランスを保ちながら相互に影響を与え合い生命の健全な維持活動を支えています。目に見える体調の変化や不調も心との密接な影響が少なからずあります。私達は病気や症状だけに焦点をあてるのではなく「人」に焦点をあてた見立てが大切だと考えています。「身心一如」の視点を大切にしてます。

西洋医学では診断するにあたり病気や症状そのものに焦点が当てられ科学的根拠(エビデンス)に基づいて医師による診断が下されます。そのため風邪であれば細菌感染やウィルス感染による喉の痛み、発熱、頭痛などの諸症状に対して薬剤の投与や処方薬が出されます。また腰痛であれば患部のレントゲン診断で骨や関節の構造に異常が無いかを確認して、なければ抗炎症剤やシップなどが処方さる事が多いと思います。

それに対して私達はレントゲン・CT・MRIなどによる撮影、血液検査などによる判断はできません。そのため昔から行われてきた問診、視診、触診などのチェックが主体になります。さらに東洋医学独特の判断基準により身体の状態を把握していきます。ここから使用するツボや経絡を選択したり、鍼・灸・按摩・指圧・マッサージなどの手法を選択、組み合わせをして治療していきます。

例えば、風邪であれば首の付け根あたりのツボ「大椎」などをよく使います。背中やお腹、手足などの全身のツボに鍼やお灸をして身体を温め発汗を促したり、自律神経の働きが良くなるように働きかけます。

腰痛なども膝の裏にあるツボ「委中」などをよく使います。患部だけでなく精神的なストレスや内臓疲労、冷えなど多角的視点から全身のツボにアプローチしていきます。心の影響が強いと判断する時などは腰痛治療に頭や首、手先、足先のツボを多用します。「心身一如」の視点から治療する事で、結果として免疫力が向上して自分の持つ自然治癒力で治すことができるのです。

とは言え、現代において科学的診断は大切です。医師による血液検査や医療機器による各種検査で病気の確定診断をする事は重要です。未知のウィルス感染、難病、内臓疾患、がん、転移などの最悪のリスクを回避した上で鍼灸、按摩指圧マッサージ、漢方などの伝統的な医術を上手に取り入れて行くことが現代においては最善と考えます。バランスよく西洋医学と東洋医学を上手に取り入れてください。

基本はここから

望診 皮膚や爪、目の色など目で見て確認できる情報。
聞診 身体や口のにおい、声の調子などから確認できる情報。
問診 アンケートや具体的な話しから確認できる情報。
切診 筋腱の状態や圧痛、体表面の温度、脈などを触って確認できる情報。
  • 入口に入ってきた時から見立ては始まっています。「予約した○○ですが」と入ってきた時の全体的な印象に始まり、表情、声のトーン、姿勢、動作などを確認していきます。また問診でお話をしながら体臭や口臭、気持ちの状態も気にしています。触診では幹部の状態はもちろんのこと、脈やお腹、舌の状態、爪の状態などを確認したり、触りながら手足などの全身の体表温度や感覚に気を配ります。これらは主訴とは一見関係ないような事も含みますが全体を診る事により見える風景があるので必要と考えています。
  • 私達のような臨床家はこれらの小さな積み重ねを毎日、1年、3年、5年、10年と繰返し続ける事で心と身体の正常な状態を理解し、小さな異常を敏感に察知できるようになってきます。経験上、人が醸し出す雰囲気、オーラのようなものがあります。これらの印象も主観的ではありますが隠れた大病をみつけだすきっかけになることも少なくありません。知識と経験からくる臨床家の感のようなものです。科学的根拠(エビデンス)は大切ですが、東洋医学に身を置く臨床家にとって経験値も大切だと感じることも多いです。

心がけていること

  • 無理せず、おごらず、初心者の頃に感じた怖さや慎重な姿勢を忘れない。
  • まずは自身の心と身体の健康を健全に保ち、知識と技術の向上を心がけてます。
  • 自らの力量を見極めて、難病や難しい症状に対して無理をせず必要な時は専門医療機関への受診を速やかに勧めます。

鍼について

腰痛や肩こりなど痛みで鍼灸を受ける方が多いので運動器の症状に有効だと思う人が多いと思います。ただ、鍼灸の効果は痛みだけではなく全身の様々な症状、疾患に効果があります。あまり知られて無いかもしれませんが、鍼灸の効果は様々な機関で研究されています。日本国内では筑波大学、明治鍼灸大学、北里大学などが代表的です。世界ではNIH(米国、国立衛生研究所)が代表的です。WHO(世界保健機構)でも様々な症状や疾患に鍼灸療法の効果や有効性を認めています。

鍼を刺すと中枢神経系に作用してモルヒネのような役割を持ったホルモン(内因性オピオイド)が放出されます。このホルモンが痛みを脳に伝える神経経路をブロックすることが分かっています。また、神経を刺激して血行を促進する事により痛みや疲労の原因物質を老廃物として排出を促します。

自律神経の調整に効果があり、自律神経によりコントロールされている胃腸や心臓、血管などの働きを調節します。胃酸の分泌や蠕動運動などが改善して良好なお通じも期待できます。健全な排尿、排便は必要な栄養を取り込み、不要な老廃物を身体から排出して効率的なデトックス効果を生みます。血液、血圧、リンパの流れなど体液の循環が良くなり、心臓の働きにも良い作用を及ぼすと思われます。手足の冷えなども良い影響があります。このように全身の生命活動、恒常性の維持に良い影響があり自己免疫力を賦活させる働きも期待できます。

鍼灸の作用

  • 東洋医学的な表現ではありませんが、平易な表現での教科書的な作用について載せておきます。
鎮静作用 疼痛や痙攣のような機能が亢進している時に鍼の刺激した場所の組織を活性化して痛みや痙攣を鎮めようとする作用。
興奮作用 痺れや感覚麻痺、運動麻痺、内臓書記官などが機能低下してしまった状態に対して鍼の刺激で興奮させて機能回復する作用。
誘導作用 患部の血流を調整する作用。直接的・間接的なものがあります。

直接的なものとしては患部に鍼を刺して血管を拡張させ患部に血液を集めることで改善する作用。

関節黄なものとしては患部から離れた健康な箇所に鍼を刺して炎症などで集まった血液を健康な部位に誘導、集めることで改善する作用。

反射作用 患部や離れた部位に鍼やお灸で刺激して、元々身体に備わっている反射を利用して改善する作用。
転調作用 自律神経失調やアレルギー体質などの体質の改善をする作用。
消毒作用 鍼の微細な刺激が免疫作用により白血球を増加させて集まります。リンパ系を活性化する事で病的な滲出物の吸収を促して改善する作用。
免疫作用 白血球を増加させて免疫機能を高める作用
防衛作用 白血球などの免疫系を増加させたり身体を守る作用。

当院で日常的に使用している鍼の道具

ディスポ鍼 ステンレス製の一般的な鍼。皆さんのイメージする鍼になります。

滅菌処理されたもので、単回使用の使い捨てになります。

円皮鍼・皮内鍼 シールで固定して数日間に渡り使用する鍼。持続的な鍼の効果を与える事ができます。

  • 太さ:0.1~0.2mm位
  • 長さ:0.3~1.5mm位
ローラ鍼

(刺さない鍼)

皮膚表面を転がして刺激を与える鍼の一種で、毛細血管の流れを促したり、手先足先、顔面など敏感な所にも使用します。皮膚疾患や自律神経調整など幅広い用途に応用できます。
てい鍼

(刺さない鍼)

細い棒状の鍼の一種で、主に経絡の調整という概念や自律神経調整に用いります。敏感な方にも使用しています。
吸い玉

(カッピング)

吸い玉は皮膚にぴったりと密着させた玉の陰圧(引く力)を利用した方法です。血流やリンパの流れなどの改善やデトックス効果、筋肉痛の改善などに効果があります。

凝り、痛み、ストレス、便秘、生理痛、冷えなど幅広い用途に応用できます。

作用を並べると下記の感じです。

  • 血液をきれいにする
  • 血行を促進する
  • 血管をはじめ組織を強化する
  • 皮膚の若さが保たれる
  • 関節の働きを円滑にする
  • 内臓の働きを活発にする
  • 神経の働きを正常にする

当院の鍼治療の特徴

  • 鍼灸は夫婦ともに担当しています。基本的には手作業による職人仕事ですので個性が出ます。当院は夫婦で施術しているのもありそれぞれの考え方、手法、感覚を重んじ、尊重して施術にあたっています。皆様の感覚で自分に合うなと感じるときは遠慮なく術者の希望を言ってください。
  • 現代医学と東洋医学的な視点を合わせた考え方をしています。筋肉、末梢神経、血管、リンパなどの分布や自律神経の働きなどと、東洋医学的な経絡経穴の視点から柔軟かつ総合的に判断するように心がけています。
院長(夫)
  • 基本的には全身治療です。
  • 一番多用する鍼の太さは0.18~0.3mm(2~8番)
  • 一番多用する鍼の長さは40~60mm
  • 使用するツボは多めで頭頂部から手足まで全身100カ所以上のツボを活用するときもあります。
  • あん摩指圧マッサージで身についた手の感覚を大切にしています。
副院長(妻)
  • 基本的には全身治療です。
  • 一番多用する鍼の太さは0.18mm(2番)
  • 一番多用する鍼の長さは40mm
  • 圧痛や硬結などの反応点を見極めながら施術しています。

一般的な注意点

  • 術後は基本的には安静にして養生を心がけ、自身の身体を労わってあげてください。
  • 当院では入浴も1時間程度あけていただければ問題ないと考えています。血行が良くなっている状態なのでいつもよりのぼせやすいかもしれませんので注意しながらゆっくりと入浴を楽しんでください。
  • まれに毛細血管などから内出血したり、紫斑が出ることがあります。自然に吸収されますので心配いりません。細心の注意を払っても防げないこともありうる事なのでご理解ください。
  • 体調により微熱、倦怠感、眠気、揉み返しのような感覚がありますが、その時はゆっくりと身体を休めてください。好転反応といわれよい反応であることが多いです。
  • 適切に施術を継続することにより、身体のエネルギー(氣)の活力、バランス、血流、水分バランス、筋腱の癒着、凝りの改善、血圧などの内科的変化など全身が変化して整ってきます。人によっては何十年と偏ってきた身体のバランスが変化して良い方向へと向かうわけですから様々な変調を感じる方もいます。当然といえばその通りなのですが、当人にしてみれば不安を感じるかも知らません。しかし視点を変えてみれば良くなってきている通過点とも言えますので頑張って戴きたいと願います。

お灸について

お灸の起源は古くは古代中国にあり約三千年位前にはその存在があったとされます。二千年以上前の中国最古の医学書「黄帝内経」にも記述があり有名です。

日本には遣唐使などによって中国から伝わったとされ、今も昔もその手法は殆ど変わらないものと思われます。

皆さんも、奥の細道に出てくる「三里に灸」は当時徒歩でしか移動手段の無かった時代に旅路での疲れを癒したとあります。また、徒然草に出てくる「四十歳以上の者は三里に灸をするとのぼせ(高血圧)を下げる」とあります。どこかで聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

お灸はヨモギの葉の裏の繊毛といわれる細かい毛のような部分を材料としています。経験的に生まれてきたツボを温める事により血行を良くして、自己免疫力を高める事で症状の緩和、治癒を目指す方法です。現代のように建物の密閉度が高くなく、冷暖房設備もなかった時代には大変有効な主要手段であったと思われます。

日本に伝えられたのは奈良時代に仏教とともに中国から伝わったとされます。明治に西洋医学が主流となるまでは日本の医療の主流の一つであったと思われます。

一般的なお灸の作用

  • 自律神経の働きに作用して調整。
  • ホルモンなどの内分泌に作用して調整
  • お灸による局所の小さなやけどが「ヒストトキシン」という科学物質を生み、皮膚から吸収される事により白血球が増加、免疫機能に作用して調整。
増血作用 赤血球を増やして血流をよくする。
止血作用 血小板の働きを良くして治癒を促進する。
強心作用 白血球を増やして外敵から防御する。

当院でよくするお灸

透熱灸 昔ながらのお灸はこれを指します。皮膚の上に直接もぐさを小さく捻ったものを立てて線香で火をつけて焼き切ります。お灸が好きで痕が残っても良い人だけに行っています。
知熱灸 米粒大や半米粒大、小指から親指大位の大きさのもぐさを皮膚の上に直接のせて8~9割程度、熱を心地よく感じる程度で取り除く方法。
灸頭鍼 刺した鍼の頭の部分にピンポン玉程度の大きさのもぐさを丸めて装着して火をつける方法。鍼の刺激とお灸の輻射熱を同時に与えて相乗効果を狙います。
隔物灸 もぐさの下にショウガやニンニク、塩などを敷いて燃やします。材料の薬効成分の浸透と温熱刺激の相乗効果を狙います。
台座灸 既製品で、台座または筒状のもぐさが仕込まれています。隔物灸の一種。せんねん灸が一般的に有名です。
棒灸 棒状に加工されたもぐさの棒に火をつけて皮膚表面に近づけて輻射熱により温めます。
箱灸 箱状や筒状の土台に網などで高さを調整してもぐさの輻射熱で温める方法。大き目のもぐさで比較的長い時間持続的に熱が伝わります。当院では竹筒状のものを自作してます。
深谷灸法 直接のせたもぐさが八割程度燃えた状態で細い竹筒状の筒で施灸部を覆います。酸素を遮断・調整する事で燃焼加減を調整して熱を伝える方法です。透熱灸の一種です。

一般的な注意点

基本的には鍼と同じですが、お灸は感じる感じないにかかわらず熱を伝えるために多少のやけどを伴います。

  • 当日は入浴などでこすったりしないでください。
  • 水ぶくれなどある時はつぶさずそっとしてください。水分は自然と吸収されます。

オーダーメイド治療を目指して

私達の生きる環境は幼少期の家庭環境に始まり、受験や就職など過度なストレスを克服して生きなければなりません。未知のウィルス感染、複雑化する世界情勢、戦争など複雑で、スピードが速く、仕事や人間関係など考えればきりがありません。ストレスのない生活は不可能です。結論から申し上げますとうまくコントロールするしかありません。私自身もそうなのですが、「心と身体の自己管理」は本当に難しいと感じます。自分でも気づかない内に精神的、肉体的な疲れをためてしまいがちです。

個人差はありますが、その蓄積が音もなく忍び寄り自分の許容量を超えてしまった時に症状として顕現化してきます。肩や首の凝り、手足の冷え、倦怠感、痛み、痺れ、便秘や下痢、肌荒れ、食欲低下、高血圧、頭痛等々、様々な体調の変化として現れ、不調はやがて病気へと進行して心身を蝕みます。

現代医学の発展の恩恵でCT、MRI、血液検査なで客観的な病態把握ができ、新薬や手術技術の向上で、多くの尊い命が救われています。その方向性は変わりませんし正しい事だと思います。しかし現代科学も発展途上の道半ばに常にあります。解明できない事も人の生命維持活動にはつきものです。検査、診断を受けても何も異常が見つからないにもかかわらず重い自覚症状がある場合も少なくありません。

鍼灸、按摩指圧マッサージ、漢方など伝統的医術は一見時代遅れのように感じる方もおられると思います。しかし科学万能主義だけが正しいわけでもありません。人の心や生命活動には未知なる部分が沢山あります。古くて新しい東洋医学、伝統的医術が今後も必要な人々は増えることと思います。

私は、人が人らしく生きること、自分らしく生きること、自分らしく生命を全うすること、医療や健康の在り方に対して多様性を認め、広い視点に立ち返り、考えてもみても良いかもしれないと思います。

私達の提供している施術は心と身体に優しい伝統的な医療技術です。鍼灸、按摩、指圧、マッサージ、運動療法などを取り入れた当院の治療は基本的には副作用がなく、穏やかに身体に働きかけ優れた効果を発揮します。自律神経の働きとバランスを整え、免疫力を上げ、自身の生命力、活動力を元気にします。時に現代医学の理解を超える事は人の身体において珍しい事ではありません。

私達の提供している鍼灸、按摩、指圧、マッサージなどの伝統的医術は、性別、年齢、体力、身体の強さなど個々の体質を重視して治療します。使うツボ、鍼の量、太さ、長さ、刺激量、刺激の種類に至るまで一人一人違いますし、同一人物でも変化する状態により変わっていきます。1対1で手間暇かかり非効率的ではありますが、血の通った温かみのあるオーダーメイドの治療の良いところだと思います。

そして、痛みや病気も「喉元過ぎれば熱さを忘れる」でなかなか難しいのですが、何よりも一番いいのは「未病治」といって病気にならない身体を維持することです。高齢化社会の昨今では自分の足で歩き続け、よく食べ、よく寝て最後まで自分らしく命を全うしたいと感じる方も多いと思います。人生の最後の瞬間まで自分らしく生き、死にたいものです。健康こそが何にも代えられない大切な財産です。人生において病気や不幸を通しての「気づき」も多くありますが健康であるからこそ人生の喜怒哀楽を謳歌できるのも真実だと思います。予防医学の役割を得意とする鍼灸、按摩指圧マッサージなどの東洋医学がお役に立てると思います。

良き出会い、良き縁が結ばれますように。

古くて新しい、先人の知恵が今に生きる東洋医学で、当院もきっとあなたやあなたの家族の明るい未来に寄り添えると思います。