当院では、運動習慣が無い人、少し遠ざかっている人へリハビリもかねてよくラジオ体操第一、と第二をおすすめしています。老若男女問わず、安全に行える身近な運動という事。私達夫婦も日々の習慣にしていますが、その手軽さと効果には驚かされるばかりです。
「たかが体操でしょ?」と思われがちですが、実はこれほど計算し尽くされた運動は他にありません。
今回は、あえてその効果を「徹底分析」してみました。
サイトリニューアル後から投稿記事での内容は理論や理屈、エビデンスなども伝えるにあたって大切と思ったため少し専門的になる傾向があります。そこで、一般の方向けの『わかりやすい解説』と、身体の仕組みに興味がある方向けの『専門的な分析』の二部構成でお届けします。一般的なメリットから、少しマニアックな専門理論まで、二つの視点で解説しますので、関心のある方は最後までお読みください。
この記事の読み方(自分に合った読み方でお楽しみください。)
- お急ぎの方・運動のコツを知りたい方:前半の「わかりやすい解説」を中心に。
- 身体の仕組みや理屈を知りたい方:後半の「専門解説」をじっくりお読みください。
ラジオ体操の各動作と主な効果と狙いについて。
ラジオ体操は、たった3分強の中に全身の約600個以上の筋肉をバランスよく刺激する動きが凝縮されています。第一は「老若男女を問わず、誰でも楽しく、無理なくできる」ことを目的としており、第二は第一よりも動きがダイナミックで「筋肉を鍛え、活力を高める」ことを目指しています。それぞれの動きがどこに効いているのか、主な効果をまとめました。
ラジオ体操第一:健康維持・柔軟性
「姿勢を整え、日常動作をスムーズにする」ための動きが中心です。
| 番号 | 運動名 | 主な効果・狙い |
| 1 | 伸びの運動 | 良い姿勢の確保、背骨を伸ばし肺の通気を促す |
| 2 | 腕を振って脚を曲げ伸ばす | 全身の血行促進、脚の筋肉(大腿四頭筋)の活性化 |
| 3 | 腕をまわす | 肩関節の柔軟性向上、肩こり解消 |
| 4 | 胸をそらす | 猫背の改善、呼吸機能を高める |
| 5 | 体を横にまげる | 脇腹のストレッチ、内臓機能の活性化 |
| 6 | 体を前後にまげる | 腰周りの柔軟性を高める、背筋のストレッチ |
| 7 | 体をねじる | 腰椎の可動域を広げる、消化器系の刺激 |
| 8 | 腕を上下にのばす | 敏捷性を養う、二の腕と背中の引き締め |
| 9 | 体を斜め下にまげ、胸をそらす | 背中から腰にかけての筋肉を伸ばす |
| 10 | 体をまわす | 腰の柔軟性を高める、全身のバランス調整 |
| 11 | 両脚でとぶ | 全身の血行促進、心肺機能の向上 |
| 12 | 腕を振って脚を曲げ伸ばす | 呼吸を整える準備、脚の筋肉をほぐす |
| 13 | 深呼吸 | 興奮した心身を鎮め、酸素をしっかり取り込む |
ラジオ体操第二:筋力強化・活力向上
「筋肉を強く動かし、身体を活性化させる」ダイナミックな動きが特徴です。
| 番号 | 運動名 | 主な効果・狙い |
| 1 | 全身をゆする | 筋肉の緊張をほぐし、運動を始める準備を整える |
| 2 | 腕と脚を曲げ伸ばす | 筋力トレーニング(スクワットに近い効果) |
| 3 | 腕を前から開き、まわす | 肩甲骨周りを動かし、胸郭を広げる |
| 4 | 胸をそらす | 首・胸の筋肉の緊張緩和、深い呼吸を促す |
| 5 | 体をほどよく横にまげる | 体幹の強化、背骨の柔軟性維持 |
| 6 | 体を前後にはずませる | 背筋と腹筋をリズミカルに刺激する |
| 7 | 体をねじる | 腹斜筋を鍛える、体幹を安定させる |
| 8 | 片あし跳びとかけ足 | 下肢の筋力強化、リズム感と瞬発力の向上 |
| 9 | ねじり反らせて斜め下 | 複雑な動きで脳と神経を刺激、柔軟性の向上 |
| 10 | 体を大きくまわす | 全身のダイナミックな連動性を高める |
| 11 | 両脚でとぶ | 第一よりも激しいジャンプで心肺を追い込む |
| 12 | 腕を振って脚を曲げ伸ばす | 呼吸を整理し、筋肉を落ち着かせる |
| 13 | 深呼吸 | 最後にリラックスして心拍数を戻す |
ちょっとしたポイント
- 第一の8番目:力強く突き出すのではなく、指先までピンと伸ばす意識が大切。
- 第二の1番目:かかとを浮かせて全身を細かくゆらす、独特のスタートですね。
- 第二の8番目:急にリズムが速くなるので、一番の難所(?)と言えるかもしれません。
効果を最大化するコツは、「どこの筋肉を動かしているか」を意識することです。例えば、体を横に曲げる時に「あ、今脇腹が伸びているな」と感じるだけで、筋肉の反応は大きく変わります。
第一と第二を連続しても7分程度。できれば毎日続けると、特に肩こりの軽減や腰痛の予防に驚くほど効果があります。でも、一番大切なのは継続する事です。毎日、習慣的には理想ですが、心身共に無理せず楽しく行い続ける事が大切です。特に年齢を重ねると継続して行う事の重みが違ってきます。
アドバイス: > 膝や腰に痛みがある方は、椅子に座ったままでも十分効果があります。大切なのは「無理のない範囲で、関節を動かすこと」です。
継続による身体への効果
ラジオ体操第一と第二をセットで継続すると、単なる「準備運動」の枠を超えて、**「究極のオールインワン・エクササイズ」**としての真価を発揮します。
毎日、あるいは定期的に続けることで現れる主な身体への影響を、4つのポイントで解説します。
1. 「動ける体」への変化(柔軟性と可動域)
ラジオ体操は、関節をあらゆる方向に動かすように設計されています。
- 関節の潤滑油: 継続することで関節液の分泌が促され、「朝起きた時の体のこわばり」がなくなります。
- 肩こり・腰痛の根本改善: 肩甲骨や股関節を大きく動かすため、デスクワークなどで固まった筋肉がほぐれ、慢性的な痛みの軽減が期待できます。
2. 自律神経の安定と血流アップ
第一と第二を合わせても約7分程度ですが、この短時間で全身の血行が劇的に良くなります。
- 自律神経のスイッチ: 朝に行うことで、副交感神経から交感神経への切り替えがスムーズになり、頭がシャキッと冴えます。
- 冷え性の改善: 全身の末梢血管まで血液が送り出されるため、基礎代謝が上がり、冷えにくい体質へと変化します。
3. 体幹の強化と姿勢の矯正
一見簡単そうに見えますが、正しいフォームで続けると体幹(インナーマッスル)が鍛えられます。
- 天然のコルセット: お腹周りや背中の筋肉が刺激され、猫背や反り腰が自然と改善し、立ち姿が美しくなります。
- 内臓機能の活性化: 体をひねる、まわす動きによって腸などの内臓が刺激され、便秘解消などのデトックス効果も期待できます。
4. 骨密度の維持と老化防止(アンチエイジング)
特に第二に含まれる「跳躍(ジャンプ)」の動きが重要です。
- 骨への刺激: 骨は適度な衝撃を受けることで強くなる性質があります。毎日のジャンプは、将来の骨粗鬆症予防に非常に有効です。
- 脳の活性化: 「次はどの動きか」を考えながらリズムに合わせて動くことは、脳トレにもなり、認知機能の維持に役立ちます。
5.💡継続の目安と「より高める」コツ
もし本格的に効果を実感したいのであれば、以下のことを意識してみてください。
- 期間の目安: まずは2週間続けてみてください。朝の目覚めの良さや、階段を登る時の足の軽さに気づくはずです。
- 強度の調整: * 朝は眠っている体を目覚めさせるよう、リズミカルに。夕方は1日の中で最も体温が高い時間帯なので、少し大きくダイナミックに動くとダイエット効果(脂肪燃焼)が高まります。
注意点: どこか痛みがある場合は、その動きだけ小さくするか、休んでOKです。「無理をしない」ことも継続の大きな秘訣です。

ここからは、身体のプロが注目する『マニアックな裏側』を解説します。理屈を知ると、明日の体操がもっと楽しくなりますよ!
ラジオ体操がなぜ100年近く愛され、リハビリ現場でも重宝されるのか。それは、この動きの中に解剖学・運動生理学の粋が集約されているからです。ホメオスタシスやバイオメカニクスの観点から、その凄さを解剖します。
専門解説:ラジオ体操は機能的全身運動
ラジオ体操の全動作における主要な使用筋肉と、それを支配する神経を専門的な視点で整理しました。
ラジオ体操は**「機能的全身運動」**として非常に完成度が高く、頚神経から仙骨神経まで、ほぼすべての脊髄神経系を網羅するように設計されています。
ラジオ体操第一:動的柔軟性と姿勢制御
| 番号 | 運動名 | 主要使用筋肉 | 主な支配神経 |
| 1 | 伸びの運動 | 脊柱起立筋、僧帽筋、三角筋 | 脊柱神経後枝、副神経、腋窩神経 |
| 2 | 腕脚の曲げ伸ばし | 大腿四頭筋、下腿三頭筋 | 大腿神経、脛骨神経 |
| 3 | 腕をまわす | 棘上筋、棘下筋、三角筋 | 肩甲上神経、腋窩神経 |
| 4 | 胸をそらす | 大胸筋(伸張)、菱形筋、僧帽筋 | 胸筋神経、肩甲背神経、副神経 |
| 5 | 体を横にまげる | 腹斜筋、腰方形筋 | 肋間神経、腰神経叢 |
| 6 | 体を前後にまげる | 腹直筋、脊柱起立筋、ハムストリングス | 肋間神経、脊柱神経後枝、坐骨神経 |
| 7 | 体をねじる | 外腹斜筋、内腹斜筋、回旋筋 | 肋間神経、腰神経叢 |
| 8 | 腕を上下にのばす | 上腕三頭筋、三角筋、僧帽筋 | 橈骨神経、腋窩神経、副神経 |
| 9 | 斜め下まげ胸そらし | 広背筋、脊柱起立筋、大殿筋 | 胸背神経、脊柱神経後枝、下殿神経 |
| 10 | 体をまわす | 腹直筋、腹斜筋、腰方形筋、深層外旋六筋 | 肋間神経、腰神経叢、仙骨神経叢 |
| 11 | 両脚でとぶ | 下腿三頭筋、大腿四頭筋、大殿筋 | 脛骨神経、大腿神経、下殿神経 |
| 12 | 腕脚の曲げ伸ばし | 大腿四頭筋、前脛骨筋 | 大腿神経、深腓骨神経 |
| 13 | 深呼吸 | 横隔膜、外肋間筋、内肋間筋 | 膈神経、肋間神経 |
ラジオ体操第二:筋出力向上と連動性
| 番号 | 運動名 | 主要使用筋肉 | 主な支配神経 |
| 1 | 全身をゆする | 下腿三頭筋、全身の抗重力筋 | 脛骨神経、各脊髄神経 |
| 2 | 腕脚の曲げ伸ばし | 大腿四頭筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋 | 大腿神経、筋皮神経、橈骨神経 |
| 3 | 腕を前から開きまわす | 三角筋(後部)、大胸筋、前鋸筋 | 腋窩神経、胸筋神経、長胸神経 |
| 4 | 胸をそらす | 斜角筋、胸鎖乳突筋、菱形筋 | 頚神経叢、副神経、肩甲背神経 |
| 5 | 体を横にまげる | 腹斜筋群、腹横筋、腰方形筋 | 肋間神経、腸骨下腹神経、腰神経 |
| 6 | 体を前後にはずませる | 腹直筋、腸腰筋、脊柱起立筋 | 肋間神経、大腿神経、脊柱神経後枝 |
| 7 | 体をねじる | 内・外腹斜筋、多裂筋 | 肋間神経、脊柱神経後枝 |
| 8 | 片あし跳びとかけ足 | 大腿四頭筋、腸腰筋、下腿三頭筋 | 大腿神経、脛骨神経、腓骨神経 |
| 9 | ねじり反らせ斜め下 | 腹斜筋、広背筋、脊柱起立筋 | 肋間神経、胸背神経、脊柱神経後枝 |
| 10 | 体を大きくまわす | 腹部・背部・下肢の連動筋群 | 全脊髄神経の協調 |
| 11 | 両脚でとぶ | 大殿筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋 | 下殿神経、大腿神経、脛骨神経 |
| 12 | 腕脚の曲げ伸ばし | 大腿四頭筋、上腕三頭筋 | 大腿神経、橈骨神経 |
| 13 | 深呼吸 | 横隔膜、腹横筋(強制呼気時) | 膈神経、肋間神経 |
専門解説:ラジオ体操のバイオメカニクス
ラジオ体操をバイオメカニクスの視点から分析すると、単なる「体操」ではなく、「動的安定性(Dynamic Stability)」と「キネティック・チェーン(運動連鎖)」を極めて効率的に構築するプログラムであることがわかります。より専門的な知見から、その構造的利点を3つの軸で解説します。
1. キネティック・チェーン(運動連鎖)の最適化
ラジオ体操の多くの動作は、足底からの反力(床反力)を体幹を通じて上肢へ伝える、あるいはその逆の連動を求めています。
- 近位固定・遠位運動(OKC)から遠位固定・近位運動(CKC)への移行: 第一の「腕を振って脚を曲げ伸ばす」動作は、足部を接地させた閉鎖性運動連鎖(CKC)であり、大腿四頭筋と下腿三頭筋の共収縮を促します。これにより、膝関節や足関節の剛性を高め、加齢に伴うロコモティブシンドロームの予防に寄与します。
- 回旋トルクの発生: 「体をねじる運動」では、骨盤の固定と胸郭の回旋による**「セパレーション(捻転差)」**が生じます。これは脊柱起立筋群や多裂筋、腹斜筋群の動的ストレッチであると同時に、回旋パワーを制御するエキセントリック収縮の訓練になっています。
2. 矢状面・前頭面・水平面の三面運動
ラジオ体操の全13種目は、解剖学的な3つの平面すべてを網羅するように構成されています。
- 矢状面(Sagittal plane): 前後にまげる運動(屈曲・伸展)
- 前頭面(Frontal plane): 横にまげる運動(側屈)
- 水平面(Transverse plane): 体をねじる、腕をまわす運動(回旋)
現代人の日常生活は「矢状面」の動きに偏りがちですが、ラジオ体操は意識的に前頭面と水平面の運動を組み込んでいます。これにより、脊椎の椎間関節の可動性を全方向に維持し、椎間板への負荷を分散させるバイオメカニクス的メリットがあります。
3. PNF(固有受容性神経筋促通法)的アプローチ
ラジオ体操の動きには、リハビリテーション技術であるPNFの概念に近い要素が含まれています。
- 対角線的・螺旋的パターン: 特に第一の9番「体を斜め下にまげ、胸をそらす」や、第二の10番「体を大きくまわす」は、単一平面ではなく対角線上の動きです。これは、日常生活やスポーツ動作において筋肉が最も出力を発揮しやすい「螺旋の動き」に合致しており、神経系の促通(動きの滑らかさ)を向上させます。
- リズミカル・イニシエーション: 音楽に合わせた一定のリズム(テンポ)での反復運動は、基底核や小脳による運動制御をスムーズにします。これにより、「予期的姿勢調節(APA)」と呼ばれる、動作の直前に姿勢を安定させる神経メカニズムが強化されます。
4. 弾性エネルギーの利用(SSC: ストレッチショートニングサイクル)
第二の「両脚でとぶ運動」や「全身をゆする運動」では、筋肉と腱の弾性を利用した**SSC(伸張・短縮サイクル)**が働きます。
- 腱のバネ作用: 着地時の衝撃をアキレス腱などが一時的に蓄え、直後の踏み切りで放出します。このバイオメカニクス的プロセスを反復することで、腱の硬度(スティフネス)が最適化され、歩行効率の向上や転倒防止に直結する「バネのある体」が作られます。
5.「相反神経抑制(Reciprocal Inhibition)」の活用
ラジオ体操の曲げ伸ばし運動は、主動作筋が収縮する際に対抗筋が緩む「相反神経抑制」を連続的に起こしています。この反射は、筋肉が縮むとき、反対側の筋肉をリラックスさせる神経回路を刺激しているのです。これにより、無理な力みを排した「効率的な脱力」を学習できるのがメリットであり、現代人が抱える「無意識の力み」をリセットするのに極めて有効なリハビリテーション要素です。
臨床的メリット: 筋肉を無理に引き伸ばすスタティック(静的)ストレッチよりも、ラジオ体操のようなダイナミック(動的)ストレッチの方が、運動前のパフォーマンス低下を防ぎつつ、安全に可動域を広げることができます。
専門解説:ホメオスタシス(生体恒常性)に与える影響
ラジオ体操がホメオスタシス(生体恒常性)に与える影響は、単なる「運動不足解消」の域を超え、神経・内分泌・免疫の3系が相互作用する「三元構造」を最適化するプロセスと言えます。
バイオメカニクス的に連動した全身運動が、どのように生体内部環境を一定に保つ力(ホメオスタシス)を底上げするのか、専門的に詳述します。
1. 自律神経系への作用:サーカディアンリズムの同調
ホメオスタシスの基盤は、24時間周期の生体リズム(サーカディアンリズム)にあります。
- 交感神経の低出力起動: 朝のラジオ体操は、睡眠中に優位だった副交感神経から交感神経への移行を劇的にスムーズにします。心拍数と血圧を「急激」ではなく「段階的」に上昇させる13のシークエンスは、心血管系への負担を抑えつつ、脳幹網様体を刺激して覚醒水準を引き上げます。
- 迷走神経の緊張適正化: 終盤の「深呼吸」は、運動で高まった交感神経を抑制し、迷走神経(副交感神経)を介して心拍変動(HRV)を整えます。この「オン・オフ」の切り替え能力の向上こそが、ストレス耐性というホメオスタシス機能を強化します。
2. 内分泌系への作用:代謝恒常性の維持
全身の約650の筋肉を動かすことは、人体最大の代謝器官をフル稼働させることを意味します。
- マイオカインの分泌: 近年の研究で、筋肉収縮時に分泌される作動物質「マイオカイン(例:イリシン、インターロイキン-6)」が、脂質代謝の改善や抗炎症作用を持つことが判明しています。継続的なラジオ体操は、インスリン感受性を高め、血糖値の恒常性維持(糖尿病予防)に寄与します。
- 熱産生と体温調節: 全身の血流促進により深部体温が約0.5〜1.0℃上昇します。これは酵素活性を最適化し、基礎代謝のセットポイントを安定させることで、外気温の変化に強い体(体温調節機能の恒常性)を作ります。
3. 免疫系への作用:バイオフィードバック
ホメオスタシスの維持には、外部からの侵入者に対する防御(免疫)の安定が不可欠です。
- リンパ還流の促進: 血管系と異なりポンプを持たないリンパ系にとって、第二の「全身をゆする」「跳躍」などの振動・収縮運動は、リンパ液を循環させる物理的ブースターとなります。これにより、免疫細胞(NK細胞やリンパ球)が全身を巡回する効率が上がり、生体防御のホメオスタシスが強化されます。インフルエンザやコロナなどの感染症予防の強化につながります。
4. 循環器・体液恒常性への作用
「ミルキングアクション(筋ポンプ作用)」の最大活用が、循環動態を安定させます。
- 静脈還流の正常化: 第一・第二ともに多用される下腿三頭筋の収縮は、下肢に滞留しがちな血液を心臓へ押し戻します。これは血圧の急激な変動を防ぐ「バロレセプター(圧受容器)」の機能を適正に保ち、血圧の恒常性を維持する訓練になります。
専門解説:効果をさらに引き出すために
ラジオ体操の効果をさらに引き出し、ホメオスタシス(生体恒常性)を盤石にするための「時間生物学的」な最適解について解説します。
結論から申し上げますと、**「朝・屋外・太陽光」**の3条件が揃うことで、ラジオ体操は単なる運動から「生体リズムの調律(チューニング)」へと進化します。
下記の視点は大切ではありますが、楽しく継続できる事が最も効果を最大限に生かす事に変わりはありません。
1. セロトニン合成とメラトニンの予約
ホメオスタシスの司令塔である視交叉上核(体内時計)をリセットするには、光刺激とリズム運動の組み合わせが最強です。
- セロトニンの活性化: 太陽光(2,500ルクス以上)を浴びながら、ラジオ体操のような一定のリズム(BPM110〜120前後)で全身を動かすと、脳内の神経伝達物質「セロトニン」の合成が促進されます。これは精神の安定(心の恒常性)に直結します。
- 睡眠の質の予約: 朝に分泌されたセロトニンは、約14〜16時間後に睡眠ホルモンである「メラトニン」へと代謝されます。つまり、朝のラジオ体操は、その日の夜の「睡眠のホメオスタシス」をその場で予約していることになります。
2. 深部体温のセットポイント調整
ホメオスタシスにおいて「体温」は極めて重要な指標です。
- モーニング・ディップの解消: ヒトの体温は明け方に最低となり、覚醒とともに上昇します。朝のラジオ体操はこの上昇カーブを急峻にし、日中の高いパフォーマンスを維持するための「活動期モード」へスイッチを切り替えます。
- 代謝のプライミング: 朝に一度深部体温を上げることで、その日一日の基礎代謝が高い状態で維持されます(プライミング効果)。これにより、エネルギー消費の恒常性が太りにくい方向へとシフトします。
3. ビタミンD合成と骨の恒常性
屋外で行うことで、皮膚でのビタミンD合成が促されます。
- カルシウム代謝の最適化: ラジオ体操の「跳躍」による物理的刺激(バイオメカニクス)と、日光によるビタミンD合成(化学的プロセス)が組み合わさることで、血中カルシウム濃度の恒常性が保たれ、骨密度の維持が最大化されます。
4. 季節への順応(季節的ホメオスタシス)
屋外での実施は、季節の変化に対する身体の適応能力を養います。
- 暑熱順化と耐寒性: 外気温を感じながら動くことで、発汗機能や血管の収縮・拡張機能が訓練されます。これにより、夏バテやヒートショックを起こしにくい、環境変化に強いホメオスタシスが構築されます。
5.実践のコツ
もし、より高みを目指すのであれば、以下の「意識の向け方」を試してみてください。
- 目を開けて遠くを見る: 視覚情報を広くとることで、前庭システム(平衡感覚)が刺激され、姿勢制御のホメオスタシスがより強固になります。
- 鼻呼吸を意識する: ラジオ体操中は、できるだけ鼻呼吸を維持してください。鼻腔を通る空気の刺激が三叉神経を介して脳を冷却し、自律神経の安定を助けます。
興味深い事実: ラジオ体操の音楽は、視覚障害のある方や、言葉の壁がある方でも「音」だけで動きがわかるように、リズムとメロディが動作の強度に合わせて精緻に設計されています。これも一種の「誰にでも届くユニバーサルなホメオスタシス支援」と言えるかもしれません。
専門的総括:ホメオスタシスの「予備能」の拡大
ラジオ体操の真の価値は、ホメオスタシスの**「予備能(Reserve Capacity)」**を拡大することにあります。
ホメオスタシス予備能とは: ストレスや疾患によって内部環境が乱された際、それを元の正常値に戻すための「余力」のこと。
毎日約7分間、全身の神経筋ユニットをリセットし続けることで、身体は「多少の負荷がかかってもすぐに中心(正常値)に戻れる」という動的な復元力を獲得します。これが、継続者が「風邪を引きにくくなった」「疲れが残りにくくなった」と感じる科学的背景です。
ここまでの解説を読んだ皆さんはどう感じたでしょうか。私自身も情報と知識を整理しながら新たな気づきがありました。夫婦ともどもラジオ体操を頑張ろうと思った次第です。



まずは明日、朝日を浴びながらテレビ、録画、YouTubeなど好きな媒体でラジオ体操を流してみませんか?
7分間のゆとりが、きっと素晴らしい一日を約束してくれます。

